画材用紙・水彩紙「ワトソン」のミューズオンラインショップ

ミューズの定番水彩紙といえばワトソン!

ほっこりあたたかなクリーム色がチャームポイントの水彩紙”ナチュラルワトソン”。
株式会社ミューズが創業した1960年から今日に至るまで、多くのアーティストから支持され続けてきた自慢の水彩紙です。

今回は、絵画教室【百三色アトリエ】のトミー先生にご協力いただき、
ナチュラルワトソンについてのレビューを書いていただきました!

【百三色アトリエ】は、色とりどりをテーマに絵画・工作などの制作をする、とっても楽しいアトリエ。
YouTube動画で制作の様子や作品づくりに役立つ情報を発信している他、
絵画教室では「デッサン講座」と「水彩・アクリル講座」を開講なさっています。

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今回のテーマ”ナチュラルワトソン”は、百三色アトリエのお教室でもご愛用いただいている水彩紙。
絵画教室の講師ならではのテクニカルな目線で、かなり詳細に語っていただいております。
それでは、以下よりトミー先生によるレビューをお楽しみください!!

 

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この度ミューズさんから、普段から愛用している「ナチュラルワトソン」のレビューをご依頼頂きました。
私が水彩画教室で初心者の生徒さんにお勧めしている水彩紙です。
数ある水彩紙の中からなぜワトソンなのか、画用紙の「サンフラワーペーパー」と海外産の「アルシュ水彩紙」と比較する形でワトソンの魅力をお伝えしていきたいと思います。

動画にまとめたものもご用意しましたのでよろしければ合わせてご覧下さい。

 

ナチュラルワトソンってどんな水彩紙?

ワトソンは多くの水彩画家にも愛用されている定番の国産の水彩紙です。
まだ高価な輸入の水彩紙ばかりだった頃、本家のイギリスの水彩紙を参考につくられたという歴史のある紙です。
ワトソンには「ホワイト色」と「ナチュラル色」がありますが、今回はより歴史が古くクラシックな魅力のある「ナチュラル色のワトソン」をご紹介していきます。

色味について

水彩紙には大きく分けてホワイトワトソンのようないわゆる「白色」のものと、やや色味のついた「オフホワイト色」のものがありますが、ナチュラルワトソンはその中でも色味の強い「クリーム色」とも言える色味を持っています。

 

昔は色味のついたものが主流でしたが、今では「白色」の水彩紙が定番になる中で「オフホワイト色」や「クリーム色」などのナチュラル色も根強い人気があります。
「白色」のものは絵具の発色が素直になるという利点がありますが、それとは逆に「クリーム色」のものは「絵に温かみを加えてくれる」「昔の写真のようなノスタルジックな雰囲気を加えてくれる」という強みがあります。

ナチュラルワトソンで描いた静物。温かみと落ち着きのある色合いに。

 

ホワイト色の水彩紙はどれも似た色になりますが、ナチュラルワトソンの色は特に色味が強い個性的なクリーム色です。
柔らかいタッチで描けるというワトソンの紙質と相性の良いこの「優しい色味」は魅力ですね!

ホワイトとナチュラルの発色の違い。マゼンタから特にシアンにかけての色合いが変わるのが印象的です。

 

紙質について

サンフラワーペーパーを含む多くの画用紙は木材パルプ製ですが、ワトソンはコットンパルプを配合しています。
紙肌も扱いやすい「中目」です。

木材パルプ製の紙の表面が「ツルツル」「カリカリ」して筆が滑るような印象があるのに対し、ワトソンの紙肌には自然な風合いがあって筆を受け止めてくれるような印象です。
それでいてアルシュのようなコットン100%のものよりかなり安価というのもオススメしやすい点です!

マスキングインクやテープの使用に関わる「表面強度」も、画用紙以上、アルシュ(コットン100%)以下の中位の強さを持っています。

 

一般的な画用紙が水や絵具をよく吸い込むのに対して、ワトソンやアルシュのような本格的な水彩紙はサイジング(水の吸い込みを抑える処理)が強めに効いているためよくはじきます。
これは絵具の発色や塗りにも影響していて、よく吸う紙は発色が沈みがちで塗りがムラがちに、よくはじく紙は発色がよく、ムラなく塗りやすくなります!

 

水彩技法適正について

にじみ技法(ウェット・イン・ウェット)

にじみ技法は水彩の醍醐味のうちの1つ。画用紙は乾きが速く色の広がり方が限定的になり、乾きムラができやすいです。
対してはじきの強い水彩紙は水の乾きが穏やかなため色がより広範囲に広がっていきます。
特にアルシュのにじみ方は美しいですが、ワトソンでも十分楽しめます!

ウェット・イン・ウェットでのにじみ。優しく柔らかく色が広がってくれます。

 

ぼかし・拭き取り技法

一度塗った線を水でぼかしていくとグラデーションが作れます。
乾きの速い画用紙はキレイにぼかすのに技術と手早さが必要ですが、乾きの穏やかな水彩紙はゆとりを持ってぼかすことができます。

ワトソンでのぼかし・拭き取り。

 

拭き取りも同様で画用紙よりも乾きの穏やかな水彩紙の方が余裕を持って色を抜くことができます。
色の定着力は紙の種類によって変わってきます。
特にワトソンは色を抜きやすいので、ある程度乾いてからでもまた濡らしてぼかしたり、拭き取ったりがやりやすいという特徴を持っています!

 

重ね塗り(ウェット・オン・ドライ)

乾きの速さと絵具の定着力は重ね塗りのしやすさにも影響します。
画用紙は乾きが速いので色を重ねやすいですが、発色は沈みがちです。
アルシュは絵具の定着がいいので、下の色が混ざらずに発色良く重ね塗りしやすいです。
ワトソンは絵具の定着力が低いのでぼかしやすいのと引き換えに重ね塗りはやや苦手です。

ワトソンでの重ね塗り。
もう一層濃くしたい時、重ね塗りでムラなく塗るのは下の色が動きやすいので少し大変です。

 

水彩技法の適正をまとめると、にじみやぼかしなどの水彩らしい技法を使うには画用紙よりもワトソンやアルシュを使った方が断然向いています。
加えて、特に重ね塗りならアルシュ、特に拭き取りやぼかしならワトソンの方が向くという感じです。

 

試し塗り

上の写真はおもちゃの絵を同じ条件で試し塗りしたものです。
よく比べて見ると、画用紙は全体的に塗りがムラがちになっています。(よく言えば味のあるタッチです)
ワトソンやアルシュの方が塗りがキレイで、特にアルシュは重ね塗りの部分がしっかりパキッと出ていて塗りに重厚感があります。
対するワトソンは微妙なニュアンスのぼかしが効いていて全体的に柔らかな印象があります。

ナチュラルワトソンで描いた「おもちゃのある静物」F6

 

画用紙は安く、色々な画材で手軽に描くのには最適ですが、水を多用する透明水彩で本格的に描くには物足りない部分があります。
安価な画用紙から中価格帯の水彩紙はこのサンフラワーペーパーと似た描き味のものが多い為、中価格帯の中でも水彩らしい表現を求めるならワトソンは特にオススメです。
 
一方で高価格帯のアルシュは水彩らしさを最大限に発揮できる素晴らしい紙ですが、色をどんどん重ねてじっくり重厚感のある大作を描くのに向いている反面、「後戻りのできなさ」があります。
一枚の価格含め、そこが初心者の方には少しハードルが高いかもしれません。
その点、ワトソンは拭き取ったりぼかしたり、修正しながら描くのが得意というのが強みです。
あらゆる技法を満遍なくこなせながら「描き手の歩調に合わせられる」というのがワトソンを初心者の方にオススメする最大の理由です!

 

商品バリエーション

 

そんなわけでワトソンは愛好家も多い定番水彩紙なのですが、主力商品ならではの「商品バリエーション」の多さも他の商品にない強みです。
厚みも3種類あり、それぞれスケッチブックやブロックで売っています。
厚紙に貼り合わせたイラストレーションボードや、大作を描きたい場合全判のシートやロールもあり、小作品ならポストカードパックなどもあります。

 

紙ラボ2023のライブペインティングで描いたB2サイズのパネル貼り。
ワトソンは大作を描きたい時も頼りになります。

 

ナチュラルワトソンの紙の色に合わせた絵具も売っていてこれも便利です。
「白が白すぎて目立ってしまう」という時に使えますよ!

 
ワトソンは国産だから供給も品質も安定してるし、コストパフォーマンスもいいし、定番品なので近くの画材屋さんなどでも買いやすい!というのがありがたいですよね!

 

ワトソンで描いた参考作品

 

人物のスケッチ。
ラフに描いても肌の色など微妙なニュアンスが表現できます。

 

鳥のスケッチ。
羽毛などの細かな描き込みにも応えてくれます

 

百三色アトリエのマスコットイラスト。
イラストでも優しい色合いに描けます。

 

動物のスケッチ。
猫の体のようにウェット・イン・ウェットで一発で決めたい時に、やはりワトソンは頼りになりますね。
醍醐味の「にじみ」を存分に楽しめます。

 

水彩画の教室でもワトソンを使わせていただいているのは正にこれが理由で、いろいろな水彩らしい表現が満遍なく使えてかつ、価格のハードルが高くない!
最初に水彩紙を知るのに丁度良いのだと思います。
せっかく習うならいろいろな技法を使ってみたいですよね?
もちろん描き方や好みもありますし、上位の紙へのステップアップもあるでしょう。
その際にワトソンで描いた経験が一つの基準になればいいと思います。

水彩画教室でワトソンを使って製作している様子。

 

「おもちゃのある静物」F6のメイキング

 
今回のワトソンコラボのテーマ作品「おもちゃのある静物」のメイキング動画を作りましたので、手順や塗り方などを知りたい方は是非ご覧ください!

 

最後に

というわけで、ナチュラルワトソンの魅力についてお伝えしてきましたがいかがでしたか?
お伝えし切れていないところもあるかもしれませんが、大好きなワトソンの紹介ができて良かったです。
この記事でワトソンを知ってくれた方、さらに好きになってくれた方がいたら嬉しいです。
是非ワトソンを使って素敵な作品を描いてみてくださいね!
最後までおつきあいいただきありがとうございました。

だから私は、ナチュラルワトソン!